前回に引き続き、起業時や法人設立時に注意したい届出・申請について少し載せておきます。
申請書の名称は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」(以下、「この申請書」という)。です。
この申請書が何なのかといいますと、会社や個人が、人を雇って給与を支払ったり、税理士などに報酬を支払ったりする場合には、その支払の都度支払金額に応じた所得税及び復興特別所得税を差し引くことになっています。(源泉徴収義務)
そして、その差し引いて預かった源泉所得税等は原則として預かった日の属する月の翌月10日までに納付しなければなりません。
しかしながら、給与の支給人員が常時10人未満である給与等の支払者は、この申請書を給与等の支払を行う事務所などの所在地を所轄する税務署長に提出して承認を受けることにより、給与等から源泉徴収した所得税の納期について年2回(7月10日と1月20日)にまとめて納付する事ができます。
なお、今回注意して頂きたいのは、この申請書を忘れずに提出して頂くことよりも、「この申請書を提出した後の源泉所得税等の納付について」です。
税務署長から納期の特例申請書の却下の通知がない場合には、この納期の特例申請書を提出した月の翌月末日に、承認があったものとみなされます。この場合には、承認を受けた月に源泉徴収する所得税及び復興特別所得税から、納期の特例の対象になります。
つまり、この申請書を提出した日の属する月に預かった源泉所得税等にはこの特例が適用されず原則通り翌月10日までに納付しなければなりません。
例えば、1月1日に開業して同時にこの申請書を提出し、2月末日までに却下の通知がなければ2月末日において承認があったものとみなされますので、承認を受けた月、つまり2月中に源泉徴収する所得税等からこの特例が適用されることとなりますので、1月中に給与等の支払いがあり、源泉徴収した所得税等がある場合には、1月徴収分だけは2月10日までに納付しなければなりません。この納付については、しばしば漏れていることが多いです。
源泉所得税の納付漏れについては、不納付加算税と延滞税がかかります。
まず、不納付加算税ですが、税率は未納税額に対して10%(税務署に指摘される前の自主納付は5%で加算税の額が5,000円未満の場合は免除)ですが、法定納期限から1月以内に未納税額が納付され、かつ、その納付前1年間法定納期限後に納付されたことがない等の法定納期限までに納付する意志があったと認められる一定の場合には、不納付加算税は課されません。つまり、今回の例で述べますと、1月に源泉徴収して納付漏れとなった所得税等を自主的に3月10日までに納付すれば不納付加算税はかかりません。
次に、延滞税です。基本的には次の①と②の率を未納税額に乗じた額の合計額で計算します。
①納期限の翌日から2か月を経過する日までの期間は原則 7.3%
②納期限の翌日から2か月を経過する日の翌日以降について14.6%
なお、本税の額が10,000円未満の場合は延滞税を納付する必要はなく、また本税の額に10,000円未満の端数がある場合はこれを切り捨てて計算します。
さらに、計算した延滞税の額が1,000円未満の場合は納付する必要はなく、またその税額が1,000円以上で100円未満の端数があるときはこれを切り捨てて納付します。
ですので、結局今回の様なケースで延滞税を取られるようなことはほとんどなく、取られた場合でもごくわずかな金額となりますが、上記の不納付加算税の説明文中に「その納付前年間法廷納期限後に納付されたことがない」とありますね。ということは、今回は取られなかった不納付加算税も、1年以内に再度納付が漏れてしまった場合には取られてしまうことになります。よって、保険の意味も込めて、なるべく納付漏れは避けたいものです。